はじめに
本記事では、購入したRaspberry Piの基本的なセットアップ方法について記載いたします。IoTや電子制御などに興味を持たれ、Raspberry Piを購入しては見たものの、何から手をつければ良いか分からず、困っている方も多いのではないでしょうか。
パソコンを使用するためには、Windowsなどのオペレーティングシステム(OS)が必要になることはご存じと思います。同じようにRaspberry Piを動作させるためには、Raspberry Pi OSなどのOSが必要になります。Raspberry Piでは、OSがインストールされたmicroSDカードをパソコン等を使用して事前に作成し、Raspberry Piに取り付けることにより使用できるようになります。(このmicroSDカードは、パソコンのHDDやSSDのようなものと考えていただければ良いと思います。)その他、画面を表示するディスプレイ、入力するためのキーボード、マウスなどが必要になります。
本記事では、Raspberry Pi OSがインストールされたmicroSDカードを作成し、モニター、キーボード、マウスの代わりにWindows PCのTeraTermなどのターミナルソフトウェアを使用してRaspberry Pi OSの基本的な設定を行う方法について記載いたします。
その後、Raspberry Pi OSのVNC機能を有効化し、VNC Viewerを使用してGUI環境で設定を行います。
以下のように、2022年04月04日にリリースされたバージョンからデフォルトユーザー「pi」が削除され、初回起動時にユーザーを作成する仕様に変更されました。
Default “pi” user has been removed; the first-boot wizard enforces the creation of a new user account.(Release noteより)
この仕様変更にともない、モニター、キーボード、マウスを使用せずRaspberry Pi OSの設定を行うため、「Raspberry Pi Imager」の「Advanced Options」メニューを使用して、「ユーザーの作成」及び「SSHの有効化」を行います。
【注意】
「Advanced Options」メニューを使用してRaspberry Pi OSのインストールを構成した場合、初回起動時に実行される構成ウィザードは実行されなくなります。
【参考】
モニター、キーボード、マウスを使用せずにセットアップを行う方法は、「ヘッドレス・セットアップ」や「ヘッドレス・インストール」と呼ばれています。
環境
- ボード
Raspberry Pi 4 Model B - OS
Raspberry Pi OS with desktop
Release date: September 22nd 2022
System: 32-bit
Kernel version: 5.15
Debian version: 11 (bullseye)
準備するもの
モニター、キーボード、マウスは必要ありません。これらを使用せずに代わりにPCを使用して設定を行います。モニター、キーボード、マウスをお持ちの場合は、設定方法に変わりはありませんので接続して行って下さい。
- Raspberry Pi 4 Model B
- AC電源アダプター(5.0V、2.0A程度)
- microSDカード(16GB以上)
- SDカードリーダーライター
- LANケーブル
- ブロードバンドルータ(DHCPサーバ機能を有するもの)
- Windows PC(モニター、キーボード、マウスを接続する場合は不要)
microSDカードの作成
Raspberry Piで使用するmicroSDカードを作成します。
Raspberry Pi Imagerのインストール
はじめに、microSDカードにRaspberry Pi OSを書き込むために使用する「Raspberry Pi Imager」ソフトウェアのダウンロードを行います。「Raspberry Pi Imager」ソフトウェアは、公式ページからダウンロードすることができます。
URL:https://www.raspberrypi.org/software/
ブラウザを使用して公式ページにアクセスします。ページ下部にある「Download for Windows」ボタンをクリックします。
次に、ダウンロードした「imager_X.X.X.exe」を実行し、「Raspberry Pi Imager」をインストールします。(※アンダーバー以降は、バージョンを表しています。)
以下の画面が表示されますので、「Install」をクリックし開始します。
問題なくインストールが終了すると以下の画面が表示されますので、「Finish」をクリックし終了します。
以下のような警告画面が表示される場合があります。表示された場合は、「詳細情報」をクリックしてください。
次に、画面下部の「実行」をクリックしてください。
microSDカードへの書き込み
SDカードリーダーライターに準備したmicroSDカードを挿入します。
1.「Raspberry Pi Imager」を実行します。
2.以下の画面が表示されますので、書き込みを行うOSを選択します。「OSを選ぶ」をクリックします。
3.以下の画面が表示されますので、「Raspberry Pi OS(32-bit)」をクリックします。
4.書き込みを行うmicroSDカードを選択します。「ストレージを選ぶ」をクリックします。
5.書き込みを行うmicroSDカードをクリックします。
6.Raspberry Piを使用するために必要な「ユーザーの作成」、TeraTermなどのターミナルソフトウェアで接続するために「SSHの有効化」を行います。「ギアマーク」をクリックします。
(※ギアマークは、OSを選択すると表示されます。)
7.以下のように「詳細の設定」画面が表示されますので、「カスタマイズオプション」欄で、「このセッションでのみ有効にする」を選択します。
8.SSHを有効化するため、「SSHを有効化する」項目にチェックマークを付けた後、「パスワード認証を使う」を選択します。
9.ユーザーを作成するため、「ユーザー名とパスワードを設定する」項目にチェックマークを付けた後、「ユーザー名」欄に作成するユーザー名、「パスワード」欄にパスワードを入力します。
(注)パスワードの再入力欄がないため、間違わないように注意して入力してください。
10.ロケールを設定するため、「ロケール設定をする」項目にチェックマークを付けた後、「タイムゾーン」欄で、「Asia/Tokyo」を選択します。「キーボードレイアウト」欄で、「jp」を選択します。
11.入力した内容を確認した後、「保存」をクリックします。
12.以下の画面が表示されますので、microSDカードへ書き込むため、「書き込む」をクリックします。
13.以下の確認画面が表示されますので、microSDカードに間違いないことを確認し、「はい」をクリックし実行します。
14.以下の画面が表示され、microSDカードへの書き込みが開始されます。書き込みは、Raspberry Pi OSのダウンロードとともに実行されますので、ネットワーク環境に依存しますが、書き込みが完了するまでしばらく時間がかかりますので、気長にお待ちください。
15.書き込みが終了すると、書き込みを行ったイメージの確認が行われますので、今しばらくお待ちください。(確認が必要ない場合は、「確認をやめる」をクリックしてください。)
16.書き込みが完了すると以下の画面が表示されますので、「続ける」をクリックします。
17.以下の画面が表示されますので、右上部の「×」をクリックし、「Raspberry Pi Imager」を終了します。
18.以上でmicroSDカードへの書き込みは終了です。microSDカードを取り外します。
Raspberry Piの起動および接続
起動
Raspberry PiにmicroSDカードを取り付け、ACアダプタを接続して起動します。
1.Raspberry Piに作成したmicroSDカードを取り付けます。
2.ACアダプタが電源に接続されていないことを確認した後、ACアダプタのUSBコネクタをRaspberry Piに接続します。
3.ブロードバンドルータと接続されているLANケーブルをRaspberry PiのLANコネクタに接続します。(無線LANを使用する場合は不要です。)
【注意】
LANケーブルは、ブロードバンドルータからIPアドレスを取得できるように、必ずRaspberry Piの電源を入れる前に接続してください。
4.ACアダプタを電源に接続し、Raspberry Piを起動します。(※Raspberry Piには、電源スイッチはありません。)
接続
IPアドレスの確認
Raspberry Piに割り当てられたIPアドレスの確認を行います。割り当てられたIPアドレスを確認するには、ご使用のブロードバンドルータの管理画面にアクセスし、DHCP機能によりRaspberry Piに割り当てたIPアドレスを確認してください。
(※DHCP機能により割り当てたIPアドレスを確認する方法については、ご使用のブロードバンドルータの取扱説明書をご参照下さい。)
Raspberry Piに割り当てたIPアドレスは、MACアドレスで確認することができます。Raspberry PiのMACアドレスは、上位の3バイトが「B8:27:EB」、「DC:A6:32」、「E4:5F:01」のいずれかで始まります。
ターミナルソフトウェアによる接続
Raspberry PiのIPアドレスが確認できましたので、TeraTermなどのターミナルソフトウェアを使用して、Raspberry Piに接続します。ここでは、TeraTermを使用します。
TeraTermは、Windows PCで一般的に使用されるTelnetやSSHに対応したターミナルソフトウェアです。
TeraTermを実行すると、以下の画面が表示されますので、「ホスト」欄に上記で確認したRaspberry PiのIPアドレスを入力し、「サービス」欄で「SSH」を選択し、「TCPポート#」欄に「22」を入力し、「OK」ボタンをクリックします。
次に、以下の画面が表示されますので、作成したユーザ名、パスワードを入力し、「OK」ボタンをクリックします。
問題なく接続されると以下のようなターミナルコンソール画面が表示されます。
Raspberry PiのVNC接続の設定
本記事では、Raspberry Pi OSのVNC機能を有効化して、PCからRaspberry PiにVNC接続して、モニターを接続した場合と同様にGUI(Graphical User Interface)環境で基本的な設定を行います。
固定IPアドレスの設定
はじめに、Raspberry Pi OSに固定IPアドレスの設定を行います。Raspberry Pi OSでは、dhcpcdというサービスがネットワークの管理を行っています。
dhcpcdは、幅広く利用されているDHCPとDHCPv6に対応したDHCPクライアントです。様々機能があり、DHCPサーバからIPアドレスなどのホスト情報を取得し、ネットワークインターフェイスに設定する機能に加えて、固定IPアドレスを設定する機能などもあります。
このdhcpcdサービスの設定ファイルである「/etc/dhcpcd.conf」ファイルを以下のとおり編集し、固定IPアドレスを割り当てます。ここでは、以下のように設定を行います。
(※ご使用の環境に応じて、適宜、置き換えて設定してください。)
項目 | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
IPアドレス | 192.168.0.10 | ブロードバンドルータのLAN側の IPアドレス |
サブネットマスク長 | 24 | ブロードバンドルータのLAN側の サブネットマスク長 |
デフォルトゲートウェイ | 192.168.0.1 | ブロードバンドルータの IPアドレス |
DNS | 192.168.0.1 | ブロードバンドルータの IPアドレス |
pi@raspberrypi:~ $ sudo vi /etc/dhcpcd.conf
【末尾に追記】
interface eth0 <== eth0は、Raspberry Pi上のLANインターフェイスのデバイス
static ip_address=192.168.0.10/24
static routers=192.168.0.1
static domain_name_servers=192.168.0.1
pi@raspberrypi:~ $
「/etc/dhcpcd.conf」ファイルの編集が終了したら、Raspberry Piを再起動します。
pi@raspberrypi:~ $ sudo reboot
接続確認
再起動が完了した後、TeraTermを使用して、設定を行った固定IPアドレスで接続できることを確認して下さい。
VNC機能の有効化
Raspberry Pi OSのVNC機能を「raspi-config」コマンドを使用して有効化します。
1.TeraTermを使用して、Raspberry Piに接続します。
2.以下のように、「raspi-config」コマンドを実行します。
pi@raspberrypi:~ $ sudo raspi-config
pi@raspberrypi:~ $
3.以下の画面が表示されますので、「3 Interface Options」を選択し、「<Select>」を選択します。
4.以下の画面が表示されますので、「I3 VNC」を選択し、「<Select>」を選択します。
5.以下の画面が表示されますので、「<Yes>」を選択し有効化します。
6.以下の画面が表示されますので、「<Ok>」を選択します。
7.以下の画面が表示されますので、「<Finish>」を選択します。
8.以下の画面が表示されますので、「<Yes>」を選択し再起動します。
解像度の設定
リモートデスクトップ接続した場合に表示される画面の解像度を「raspi-config」コマンドを使用して変更します。
1.TeraTermを使用して、Raspberry Piに接続します。
2.以下のように、「raspi-config」コマンドを実行します。
pi@raspberrypi:~ $ sudo raspi-config
pi@raspberrypi:~ $
3.以下の画面が表示されますので、「2 Display Options」を選択し、「<Select>」を選択します。
4.以下の画面が表示されますので、「D5 Resolution」を選択し、「<Select>」を選択します。
5.以下の画面が表示されますので、「1024×768」を選択し、「<Select>」を選択します。
6.以下の画面が表示されますので、「<Ok>」を選択します。
7.以下の画面が表示されますので、「<Finish>」を選択し、「raspi-config」コマンドを終了します。
以下の画面が表示されますので、「<Yes>」を選択し再起動します。
以上で、Raspberry Pi側のVNC機能の設定は終了です。
リモートデスクトップ(VNC)接続
本記事では、PCからVNC接続を行うため、「VNC Viewer」ソフトウェアを使用します。
ソフトウェアのインストール
「VNC Viewer」は、RealVNC社の公式ページからダウンロードすることができますので、ダウンロードし、インストールを行います。
URL:https://www.realvnc.com/en/connect/download/viewer/
VNC接続
「VNC Viewer」を使用して、Raspberry Piと接続します。
1.「VNC Viewer」を実行します。
2.以下の画面が表示されますので、入力欄にRaspberry PiのIPアドレスを入力し「Enter」を押します。
3.以下の画面が表示されますので、「Continue」をクリックします。
4.以下の画面が表示されますので、「Username」欄にユーザー名、「Password」欄にパスワードをそれぞれ入力し、「OK」をクリックします。
5.以下の画面のように、デスクトップ画面が表示されます。
6.以上で接続は完了です。
初期設定
Raspberry PiにVNC接続ができるようになりましたので、GUI環境で基本的なネットワークインターフェイスの設定、ロケールおよびタイムゾーンの設定を行います。
ネットワークインターフェイスの設定
ネットワークインターフェイスに固定IPアドレスを設定します。
1.画面右上部の上下矢印のアイコンを右クリックします。
2.「Wireless & Wired Network Settings」をクリックします。
3.ここでは、以下の表のように各欄に入力し、「適用」をクリックします。次に、「閉じる」をクリックします。
(※ご使用の環境に合せて、適宜、入力してください。)
項目 | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
interface | eth0 | Raspberry Pi本体の LANアダプタ |
Disable IPv6 | チェック | IPv6は使用しない |
IPv4 Address | 192.168.0.10/24 | IPv4アドレス/サブネット長 |
Router | 192.168.0.1 | ブロードバンドルータの IPアドレス |
DNS Server | 192.168.0.1 | ブロードバンドルータの IPアドレス |
4.設定した内容を反映させるために再起動を行います。
【備考】
「固定IPアドレスの設定」で、TeraTermを使用して「/etc/dhcpcd.conf」ファイルを編集し、ネットワークインターフェイスの設定を行いましたが、「適用」ボタンをクリックすると、「/etc/dhcpcd.conf」ファイルが書き換えられますが、設定を反映するには再起動を行う必要があります。
ロケールの設定
使用する言語や文字セットなどのロケールの設定を行います。
1.画面左上部の「Raspberry」アイコンをクリックし、「設定」→「Raspberry Piの設定」をクリックします。
2.以下の画面が表示されますので、「ローカライゼーション」タブをクリックし、「ロケールの設定」をクリックします。
3.以下の画面が表示されますので、以下のとおり入力し、「OK」ボタンをクリックします。
項目 | 設定内容 |
---|---|
言語 | ja (Japanese) |
国 | JP |
文字セット | UTF-8 |
タイムゾーンの設定
タイムゾーンの設定を行います。
1.以下の画面で、「タイムゾーンの設定」をクリックします。
2.以下の画面が表示されますので、以下のとおり入力し、「OK」をクリックします。
項目 | 設定内容 |
---|---|
地域 | Asia |
国 | Tokyo |
3.以下の画面が表示されますので、「OK」をクリックします。
パッケージの更新
インストールされているパッケージを最新の状態にアップデートします。パッケージのアップデートは、「LXTerminal」などのターミナルソフトウェアを使用して、コマンドで行う必要があります。
1.画面左上部の「Raspberry」アイコンをクリックし、「アクセサリ」→「LXTerminal」を選択します。
2.以下の画面のように「LXTerminal」が起動します。
3.「LXTerminal」で以下のコマンドを実行し、パッケージの最新リストを取得します。
pi@raspberrypi:~ $ sudo apt update
pi@raspberrypi:~ $
4.以下のコマンドを実行し、パッケージを最新の状態にアップデートします。
pi@raspberrypi:~ $ sudo apt upgrade
pi@raspberrypi:~ $
以上で終了です。
最後に
Raspberry Piのデスクトップ環境では設定できる項目が少なく、「LXTerminal」などのターミナルソフトウェアを使用して、コマンドラインで設定することになります。初めは、戸惑うかもしれませんが、是非、コマンドラインで設定する方法に慣れていただければと思います。
コメント
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